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インドの旅の景色で、
コルカタからの3等寝台車に乗り、南インドのチェンナイへ向かっていたときのこと。
その電車には2日半乗りっぱなしで、まわりはインド人ばかりの車両で。
ネパールに近いダージリンから南におりてきていたので、
気候もわかりやすいくらい、冬の温度から初夏くらいの温度にかわり。
景色も、山の景色から橙色やきいろ一色のマリーゴールド畑や水田の景色にうつりかわり。
文字も、ヒンディー語からタミル語にかわり。
やっともうすぐチェンナイにつくので、車内がざわざわしだしたときだった。
となりの寝台席には若いインドの少年たちが何人かで乗ってて、途中でちょっと話したときに、出稼ぎで大工をしに行ってて、何ヵ月ぶりかに家に帰るらしかった。
そのうちのひとりの少年が、敷いてた布をきれいにたたんで鞄にいれようとしたとき、
その布があまりにもすてきで声をかけてしまった。
その布はおおざっぱだけどていねいに縫われたラリーキルトで、
よくよく聞くとおばあちゃんが縫ってくれたものということ。
着なくなったサリーや端切れをあわして刺し子でつくられた布だった。
日本で売られてるラリーキルトはみたことがあったけど、
生活で使われてるラリーキルトをはじめてみた。
何ヵ月か出稼ぎしてた少年の鞄には大工道具のこてとその布と、少しの着るものだけきれいにたいせつそうに入ってた。
「すてきな布だね!」
って話すと、少年は照れくさそうだけど、嬉しそうに少し笑っていた。
すごくいい景色だった。
その少年が持ってるたいせつなラリーキルトにはかなわないけど。
ずっと想っていたラリーキルトがうちに来た。
この布にはどんな物語があったのかとか、この布のこれからを想像すると、ちょっとだけわくわくする。
by suien-moon
| 2010-06-27 22:52